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家具雑貨工房 ki-kiru(きーきる)

北海道広尾町で木製品を作っています
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日記

パンク修理

父の自転車。

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テレビのワイドショーなどに出てくるようなゴミ屋敷同然の店舗で本当に人一人が歩くスペースしかありません。

父がまだ元気なうちに少しでも片付けるように何度も言っていたのですが、本人にとっては商品であり商売道具であり、宝の山だったのだと思います。

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それでも今年の春先にここの看板を降ろす手伝いをしてくれ、と言ってきた頃は自力で整理しようという気になっていたようでしたが、如何せん持病(心臓)持ちの年寄りでしたから「おい、片付けようと思って少しやってみたけど、こりゃ俺には無理だな」とニヤニヤしながら言うのです。

「どうせ、俺に全部やらせるつもりなんだろ」と私が言うと。

「その通り!」とは言いませんでしたが、そのニヤケた父の顔は「後は頼んだぞ」と言っていたように思い出します。

まだ四十九日も終わっていませんが、ここには私の仕事にも使えそうな道具もあるので帯広へ行った際は父の自転車屋に寄って遺品整理のようにこの雑品の山を物色しています。

自転車屋の中でガッサガッサと雑品を掻き分けていたら40歳(失礼)くらいの悲壮感漂う女性が自転車を押して来て、「後ろタイヤがパンクして・・・おじさん居ますか?」とパンク修理依頼のお客さんでした。

父が先月亡くなって商売はやっていない事を伝えると、「信じられない」という顔をして「せっかくお父さんと仲良くなったのに。じゃ、どこでパンク直してもらったら良いんだろうか」と漏らしました。

8年前から家族全員分の自転車の面倒をみてもらっていたと言うその女性に、少し遠くなるけどまだ商売を辞めていない最寄りの自転車屋を紹介したのですが、パンクした自転車を押してそこまで行くことにためらっている様子・・・

「俺でも良かったら、やってやるかい?」

8月と9月は全然仕事をしていなかったので早く工房に帰りたかったのですが、仕方ないですね。

私は子供の頃からここで父の仕事を見ていたし、25年くらい前になりますが自転車と石油ストーブの修理修繕を教えてもらった事があって腕に覚えがありました。


前輪のパンクより後輪のパンク修理の方が面倒なんだよな・・・などと思いながら作業を始めると、その女性はドッカリとアスファルトに座り込んで父の事を話しだしました。

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店はとうに閉めているし私は仕事だと思ってもいないので、その女性とのやりとりは全くのタメ口でお客さん扱いをしておらず、まるで昔からの顔見知りのように応対していました。

モタモタとしながらもパンク修理が終わりましたが人助けのつもりでやったので「お金は要らないよ」と言いましたが、「本当に助かりました、本当にありがとう」と泣きながら1,500円を私に差し出すので無碍にできず「じゃ、これで線香買わせていただきます」と受け取りました。

仕方ない、やってやるかと思ってやったパンク修理でしたが、「本当にありがとう」と何度も言われて何だか不思議な感情が沸いてきました。

父はこんな商売を50年もやっていたんだな。



20年以上ぶりのパンク修理を簡単にやってこなして見せましたが、内心はドキドキで身体は汗ビッショリでした。

さあ、もう帰ろう。と、思ったら矢継ぎ早にお客さんらしき年配の男性が声を掛けてきました。

「父さん居るかい?後ろタイヤがパンクしちゃってさぁ。あそこのホームセンターでパンクしにくいタイヤを買ったんだけど全然ダメなんだよなー」

先ほどの女性同様に商売を辞めた事を説明すると、やはりビックリして落胆していました。

どこから自転車を押してきたのか分かりませんが、その齢70と思しき男性がとても疲れた顔をして私を見つめるので「俺も出来るんだけど・・・やる?」と、眉間にシワを寄らせながら微妙に首をかしげるとその男性はニッコリと微笑んで「おぅ、やってくれ」と。

作業中、私「俺、仕事じゃないからね、だからお金は要らないよ」おじさん「いいって、いいって」を何度か繰り返しながらその男性は父との思い出話をします。

そして、先ほどの女性もそうでしたが、こうやって↓自転車を抑えたりして手伝ってくれるんですね。

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修理が終わって、もしかしたら上手くいってないかも知れないからやっぱりお金は貰えないと言ったのですが、一部始終を覗き込むように見ていたその男性が「上出来だ、これで花でも買ってやれ」と1,500円くれました。

「すみません、ありがとうございます」 うっかり、大泣きしそうになりました。


小一時間で二件のパンク修理。たいした設備も必要でないし接客に神経をすり減らす事も無いのに時給3,000円だったら今の私の仕事より儲かるな。慣れてきたらその倍はいける。

商売って商品やサービスを売って、丁寧な接客をすればただそれで良いわけでは無い事は分かっていたけれど、来るお客さんが皆親戚のようなこんな商売がまだあったんだな。

私がまだまだ若い頃は、いつも汚れた作業着でいつも汚い手をして、貧しい生活を強いられる父の仕事に何の魅力も感じなかったけど、父が50年もの間この仕事に拘って続けていた気持ちが今は解るような気がします。


またまたお客さんが来て、やはり自転車のパンク修理依頼だったのですがその人は自動車に積んで来ていたので最寄りの自転車屋を紹介してお断りしたのですが、これまでの父との関わり方を思い出すように語って「自転車屋さんがどんどん無くなってしまって、最後どうなっちゃうんだろう・・・」と言っていました。

地域の自転車屋が激減した今はそれなりの需要があるようです。

帯広へ戻って自転車屋継いじゃおうかな・・・

否、否、ダメ、ダメ。

私は私の道があるのだ。




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2 Comments

斗沢 誠 says..."ボルドーさん、ご無沙汰しています。"

放置状態だったブログにボルドーさんからのコメント頂き背筋を伸ばしています。

本当はもっと書きたい面白ネタがあるのですが、文字数が多いと見た瞬間に敬遠されるのではないかと思いこの程度にしました。

ボルドーさんからコメント頂いて改めて記事を読み返したのですが、色んな事をブワァーっと思い出してしまい今大泣きしています。
私はアホなので凄く雑な生き方をしているのですが、こういう事↑があるとチャンとしなくちゃ人生が勿体無いと、背筋を伸ばす事が出来ます。
ありがとうございます。
2018.11.17 09:05 | URL | #- [edit]
ボルドー says...""
お久しぶりです、
久し振りに拝見したら、お父様がなくなられたんですね、
お悔やみを申し上げます。
いやー!拝見して、どんな仕事でもその人その人にとって
大切な人生がそこにはあるんですね。
まるで映画のシーンのようなブログでした。(お父さん役は西田敏行のような、
息子さんは誰がいいかな・・・)などと思いながら拝見いたしました。
なんだかジーンと来て感動しました。
きっとお父様も、「さすが我が息子と・・」にやりとされているのではないでしょうか。
2018.11.15 08:54 | URL | #- [edit]

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