家具雑貨工房 ki-kiru(きーきる)

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お母さんの机

お母さんの事 11

大樹町の病院に着き、お母さんを車椅子に移す事がなかなかうまく行かずもたもたしているうちに彼女と院長が来ました。


日曜日の夜だったせいか院長以外のひと気は感じられず、ひっそりとしたロビーを左に曲がり診察室に入りました。

看護婦がいなかったり、救急車が来ていなかった事を一瞬でも忘れてしまうくらい達成感というのか安堵感のようなものを感じていました。

車椅子からベットに移し「もう心配ないよ、良くがんばったね」と声をかけました。

お母さんはうなづいていました。

院長は診察室の奥のほうでどこかへ電話をしている様子でした、まさか今救急車を呼び出しているんじゃないだろうな・・・

そんな事を想像しているうちに、三回目の痙攣がまた始まりました。


痙攣は通常は数分で治まるそうですが、長時間続いたり断続的に発症すると生命に危険な場合があるようです。


「先生!お母さんが・・・また始まりました・・・」

私は、「先生!」と言っただけでお母さんの変化を理解し、すぐさま対応をしてくれると期待したのですが、そうではありませんでした。

その時の私の異常に緊張した神経では、正直いかにもズブイように感じました。

こういう場合の医療の現場では落ち着きが鉄則なのでしょうから責める事は決してできませんが、身内の我々は何か大きな声で叫びたい気持ちでした。

通常であれば私たちは診察室の外で待たされ、中で何が行われているか知ることは出来ない筈ですが、看護師も居ない診察室でお母さんを一人にはできません。

お母さんの症状は次第にひどくなってゆき、つい今しがたの修羅場のような状態がまた始まってしまいました。

さっきは真っ暗な車中でしたから気がつかない部分もありましたが、今は病院の照明がやけに明るく、苦しむお母さんの顔色の変化とか全てを無情に映し出します。

お母さんが自分をコントロール出来ずバタバタと痙攣させる音、みるみるうちに赤黒くなってゆくお母さんの顔や手、激しくきしむベット、彼女のお母さんを呼ぶ声、びゅーびゅーと呼吸困難を叫ぶ悲鳴、私たち意外誰も居ない診察室・・・

いたたまれなくなり、私はまた医者のところへ行き言いました。

「何処と電話してるか知らないが、とにかく早く来てください!!」







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