家具雑貨工房 ki-kiru(きーきる)

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お母さんの机

お母さんのつくえ 26

私は、万能作業台に脚になる材を縦に固定して11cm程挽き割るように鋸を入れました。

当然のように殆んど進みませんが、技術もお金も無い私には時間をかける以外にありません。

慎重に、墨腺から外れないように、瞬きもせず神経をその一点に集中して鋸をひきます。

そんな私の姿を見つめていたお母さんが、ゆっくりと立ち上がりました。

そして、プルプルと両手を差し伸べるようにして私に近づき、作業台に固定されたその材をガシッと掴んだのです。


あまりにも作業の進まない私の姿を哀れんだのか、少しでも役に立ちたい使命感なのか、木がぐらぐらと動かぬよう、両手で押さえてくれました。

私は『お母さん大丈夫だよ、俺一人で出来るから』と言ったのですが、聞こえないふりをしているのか知らん振りをして材を握り締めます。

私も鋸を引く手を止めていませんでした。

細かいおが屑が舞い上がり、部屋中に充満しているようでした。

私は、時間の経過も忘れ一心不乱に鬼の形相で鋸を引きます。

お母さんは両目をギュッと瞑り、時々小さく咳をしながら、耐えがたきを耐え偲びがたきを偲びといった感じで、必死になって手伝ってくれています。

それは、心も体も一体となって一つの事を成し遂げようとする『愛の姿』そのものでした。

私の彼女は台所から怨めしそうに覗いていました。

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