家具雑貨工房 ki-kiru(きーきる)

木の家具や雑貨は見えない部分が肝心です。隠し事はありませんよ、全て公開しています。
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お母さんの机

お母さんのつくえ 26

私は、万能作業台に脚になる材を縦に固定して11cm程挽き割るように鋸を入れました。

当然のように殆んど進みませんが、技術もお金も無い私には時間をかける以外にありません。

慎重に、墨腺から外れないように、瞬きもせず神経をその一点に集中して鋸をひきます。

そんな私の姿を見つめていたお母さんが、ゆっくりと立ち上がりました。

そして、プルプルと両手を差し伸べるようにして私に近づき、作業台に固定されたその材をガシッと掴んだのです。


あまりにも作業の進まない私の姿を哀れんだのか、少しでも役に立ちたい使命感なのか、木がぐらぐらと動かぬよう、両手で押さえてくれました。

私は『お母さん大丈夫だよ、俺一人で出来るから』と言ったのですが、聞こえないふりをしているのか知らん振りをして材を握り締めます。

私も鋸を引く手を止めていませんでした。

細かいおが屑が舞い上がり、部屋中に充満しているようでした。

私は、時間の経過も忘れ一心不乱に鬼の形相で鋸を引きます。

お母さんは両目をギュッと瞑り、時々小さく咳をしながら、耐えがたきを耐え偲びがたきを偲びといった感じで、必死になって手伝ってくれています。

それは、心も体も一体となって一つの事を成し遂げようとする『愛の姿』そのものでした。

私の彼女は台所から怨めしそうに覗いていました。

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お母さんの机

お母さんのつくえ 25

私はその、タテ、ヨコ、ナナメと印刷された鋸を手にして一路広尾町に向かっていました。

本当は鋸ぐらいは本物のというか、職人さんが使っているチャンとしたやつを買おうと思っていました。

ですが、チャンとしたやつというのは、目立てをしないと使えないそうです。

つまり新品を買ったからといっても、その後よい砥ぎ職人を探して目立てをしてもらわなければ使い物にならない、と言うことなのです。

さらに言うならば、新品を買ってそのまま使えるやつは素人用の鋸だと店長が諭す様に教授していました。

私は気に入らないな、という気持ちと何でもいいからこれで切ってみたいという気持ちが複雑に混りあっていました。


彼女の家に到着...


私は一番に、買ったばかりの鋸をまるで武士が鞘から刀を抜くようにゆっくりと取り出しました。

そして、いつものように茶の間で部材を加工します。

材に鋸を入れた瞬間理解しました、切れないのです。『やっぱりか...』民生器具というかDIY用というか素人用というやつは、はっぱりこういう物なのでしょう。

以前、エレキギターを改造しようとして安いハンドドリルを買ったのですが、硬いメイプルのボデーに穴を開けようとハンドルを回転させた途端、壊れてしまった事がありました。

安物のツールはダメだと理解していながらも、またやってしまったか...と悔みました。

でも、こんな事で製作を先延ばしには出来ませんから、やはり根性でなんとかするしかありません。

『ようし、何時間かかってもやってやる』

自分に暗示をかけるようにいいました。

すぐ近くにいたお母さんが、私の方を見て頷きました。









お母さんの机

お母さんのつくえ 24

『あの~木を縦に切りたいんですけど~』

訪ねたのは帯広では老舗の部類に入る某大工道具専門店でした。

私の住むこの帯広には、この手の専門店が3店ほどあって、明らかに素人など相手にはしていないという雰囲気をかもしだしているのです。

定休日は日曜日です。

私のような日曜日しか休日がなく、しかも平日は夜にならないと帰られない者は閉店時間に間に合いません。

「仕方ないな」

私はA曇部長と私の部下たちに嘘をついて外出しました。

「それじゃチョット行ってきます」

そう言って、その専門店に行ったのです。そして、そこの店長が応対してくれました。

私「あのぅ、手鋸で木を縦に切りたいんですけど、なにか良い鋸を紹介して貰えませんか?」

店長「ん?何を切るんですか?」

私「木です」

店長「イヤ、そうじゃなくて」

私「あっ、ハイ。2バイ材を縦に挽き割りたいんですが、ものすごく時間がかかるので縦挽き用の鋸が欲しいんです」

店長「丸鋸を使えば良いじゃないですか」

私「丸鋸はあるんですが、うるさくてダメなんです」

店長「じゃ、ジグソーは?」

私「あれ真っ直ぐ切れませんよね」

店長「そりゃそうだけど、今時プロでもそんな事やりませんよ!」

私は、そんな事はいいから、そこのチョット高そうな両刃の鋸を見せてくれよ、と思っていました。

結局、その店長は高価なプロ用の鋸を買っても用を足さないかもしれないから、まずこれを使ってみなさいと、1500円ほどのタテ、ヨコ、ナナメ!と印刷された鋸を手渡しました。
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まあ、使ってみるか…安いし。

お母さんの机

お母さんのつくえ 23

まずは脚の加工からはじめました。

側板をのせる部分を欠き取りました。
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直角に、まっすぐ切れるように治具を作り、手のこをひきます。

あらかじめ引いておいた墨線通りにのこを引くのですが、すぐに手が止まりました。

まったく、手ごたえがないのです。

『あれっ、おかしいな。もう切れなくなったのかな』

そんなはずはありません、このつくえを作るために替え刃式の刃を取り替えたばかりでした。

きっと、たまたま木の硬い部分があって鋸が進んでいかないのだろうと思い、『千里の道も一歩から~』などと言いながら根性でなんとかしようと、ひたすら鋸を引きます。

汗びっしょりになり、107mm 先の墨線までやっと切り終えました。

時計を見ると2時間経過していました。足は4本あります、こんな事やってられません。

残る3本は後回しにして、今度は足を細く見せようと、テーパーカットを試みました。
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写真は広角で、ものすごく先細りに見えますが実際は最太部との差は2分の1です。

直線定規をあてて手鋸を入れてみましたが、やっぱり切れません。

それもそのはず、私の使っている鋸は片刃の横切り用。それを木目にそって縦に切ろうにもアサリの部分に木屑が詰まり、すぐに切れなくなってしまうのです。

素人の浅はかさの極み、だいたいは想像していたものの、ここまで切れないものとは思いませんでした。

この日はもう諦めて、後日帯広の某大工道具専門店へ相談に行くことにしました。

とほほ・・・

お母さんの机

お母さんのつくえ 22

お母さんのつくえは、カントリー風にする事になりました。

奥行き45cm幅90cmの天板、脚の長さは65cmです。抽斗は、どこになにが入っているか捜さなくても良い様に大きな抽斗を一つだけにしようと考えました。

今回の材料はSPF材です。脚は2x4、その他は1x4、抽斗の底板はラワン合板の4mmの予定です。

私は、マンション木工ですから可能なかぎり大きな音を出さないように努めました。

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床にはウレタンマット15mmを敷いて下の住人に気をつかいました。作業台はこんなものでも無いと不憫だろうと彼女が買ってくれた安い万能作業台です。

万能作業台は大活躍していますが、私の経験では世の中で万能と名の付くものは、なにに利用しても不便不向きと学習しています。この作業台も類にもれず、使えないやつですが、当時はこれがなくてははじまりませんでした。

奥に見えるのが洗濯物を干している風景です、テレビやテーブルがあり紛れも無くここは茶の間です。
この写真では切れてしまっていますが、左に長椅子があり、お母さんがニコニコと見つめながらチョコンと座っていました。

うるさくて、おが屑が飛び散る電動工具はつかえません。

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使っているのはゼットソー8寸目。

ヨイショヨイショと少しずつ形になってゆくのです。

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