家具雑貨工房 ki-kiru(きーきる)

木の家具や雑貨は見えない部分が肝心です。隠し事はありませんよ、全て公開しています。

 

お母さんのつくえ 30 

「ヤバいっ」

と思いました。

なぜそんな過剰な反応をしたかというと、新しく引っ越してきたこの公営マンションには、とてもウルサイ人がいるのだと何度も聞いていたからなのです。

どんな塩梅かというと・・・

「階段の電気がつきっぱなしだ!」とか「除雪の時は車をどうにかしろ!」だとか・・・

いちいちピンポンを押して、玄関先でクレームを言ってくるのだと、私の彼女がこぼしていたのです。

そのウルサイ人というのは1階のT村さんの奥さんでした。


私は人気に気付いた瞬間、ゆっくりと振り返りました。

ゆっくりと風景が動き、視界のギリギリ左端におばさんの姿が認識できたその刹那。

「ヤバい、気後れしたら負けだ。先手必勝だ。」とか、

「最初の一言が肝心だ、下手にでたらダメだ」などと一瞬の間に、あれこれと考えました。

そして、視界の真ん中にT村さんの奥さんが入ったと同時に私の口から

「迷惑でないかい?」と、出てきました。

きっと、鬼のような顔をしていたと思います。私は作業に集中している時は、いつもそんな顔をしているのです。


すると、T村さんの奥さんは「な~んもさぁ、あんた全然気にするんでなぁい」と広尾の独特なイントネイションで、しかもニッコリとしながら言いました。

私は「よし、勝ちだ。いや、勝ち負けではない、正解をひいたのだ」

などと他の誰にも理解されないような事を考え、胸を撫で下ろしました。

さらに、何かを嗅ぎつけたように別の住人N村さんのおじさんが突然現れて・・・

「あんたは、いい道具をもっているなぁ」

と感心するように腕を組んで近づいて来ました。



ひとしきり、どうでもよい話をして散会・・・自己紹介など一切なし。

特に意味も無いような会話の端はしに、お互いに敵意はない、これからヨロシクネ、などの意を感じ取りここのオリエンテイションが終わりました。


私は物置の防音をなんとなく施し、部屋に戻りました・・・


彼女に事の一分始終を話して、非常に穏やかな雰囲気だったと報告すると

「まあちゃんは凄いね、どうしてそんな事ができるの?」と、ビックリするように言いました。

物置の防音の事ではありません。

私の彼女はこちらに引越して来てから、ここの住人、特にT村さんの奥さんとの付き合い方にかなり神経を尖らせていたのでした。

彼女自身も、芽室町の農家出身の田舎者ですが、ここは気も言葉も荒い漁師町。

おなじ田舎の人でもカッテが違い、馴染めずに悩んでいたのでしょう。

ところがドッコイ、私はその第一関門を難無くスルリと突破してみせたのです。

彼女は私のその才能を、明らかに羨望の眼差しで見つめていました。
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