家具雑貨工房 ki-kiru(きーきる)

木の家具や雑貨は見えない部分が肝心です。隠し事はありませんよ、全て公開しています。

 

お母さんのつくえ 25 

私はその、タテ、ヨコ、ナナメと印刷された鋸を手にして一路広尾町に向かっていました。

本当は鋸ぐらいは本物のというか、職人さんが使っているチャンとしたやつを買おうと思っていました。

ですが、チャンとしたやつというのは、目立てをしないと使えないそうです。

つまり新品を買ったからといっても、その後よい砥ぎ職人を探して目立てをしてもらわなければ使い物にならない、と言うことなのです。

さらに言うならば、新品を買ってそのまま使えるやつは素人用の鋸だと店長が諭す様に教授していました。

私は気に入らないな、という気持ちと何でもいいからこれで切ってみたいという気持ちが複雑に混りあっていました。


彼女の家に到着...


私は一番に、買ったばかりの鋸をまるで武士が鞘から刀を抜くようにゆっくりと取り出しました。

そして、いつものように茶の間で部材を加工します。

材に鋸を入れた瞬間理解しました、切れないのです。『やっぱりか...』民生器具というかDIY用というか素人用というやつは、はっぱりこういう物なのでしょう。

以前、エレキギターを改造しようとして安いハンドドリルを買ったのですが、硬いメイプルのボデーに穴を開けようとハンドルを回転させた途端、壊れてしまった事がありました。

安物のツールはダメだと理解していながらも、またやってしまったか...と悔みました。

でも、こんな事で製作を先延ばしには出来ませんから、やはり根性でなんとかするしかありません。

『ようし、何時間かかってもやってやる』

自分に暗示をかけるようにいいました。

すぐ近くにいたお母さんが、私の方を見て頷きました。









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